ナナ公の独り言

都内在住既婚会社員女の日記です

妻を差し出す男

あるところに、新婚の夫婦がいました。
夫は、若く美しい妻を心の底から愛していましたし、妻も夫をひじょうに尊敬していました。

さてこの夫には、長年のライバルがいました。夫とはなにもかもを競う間柄でした。
このライバルの男は、金も力もある美男子でした。
夫は全ての点で、男に劣っていましたが、恋の争いだけには勝ちました。
ライバルの男と、夫は、恋のライバルでもあったのです。
しかし、その美しい女性が選んだのは今の夫で、ライバルの男は身を引いたのです。

ある日、このライバルの男が、とある花壇を焼き払おうと決めました。
綺麗に咲いた花をひとつ残らず引っこ抜いて、そこを沼にかえてしまおうと思ったのです。

夫は、その話を聞き心を痛めました。
けれども、全てにおいて劣っている夫に、ライバルの決めたことを阻止するのは不可能です。
夫は、自分の妻を男の元に差し向けました。
愛する妻に、男を誘惑させたのです。
花壇を守るために。

もちろんそれは一時のことです。
妻とのセックスに飽きれば、男は、花壇の破壊の続きにとりかかるでしょう。
しかし、妻の体に溺れているうちは、花壇のことを忘れてセックスに没頭しています。
男が妻の体を好きなように弄ぶ、その窓の外で、
花壇の花達は、暖かな陽をあびて優しい風に吹かれています。

みなさん、この話、どう思いましたか?

実はこの話は、バリの神話です。

ナナ公が数年前にバリに旅行に行った時、現地の案内人からきいたもので、
正確な名前などは覚えていませんが、
これが、バリの人々の考える世界なのです。

絶対神である悪の神が、ヒトの世界を滅ぼすことに決めた。
善の神は、何度か戦いを挑んだが、絶対神である悪の神には敵わなかった。

善の神は、自分の妻を絶対神の誘惑に向かわせた。
絶対神は、善の神の妻を抱いた。

この絶対神と、善の神の妻との性交中の、永遠でもあり一瞬でもあるこの時間だけが、
我々ヒトに許された時間なのだ。
我々の世界の存続は、善の神とその妻の忍耐の上に在る。

自分の妻をライバルに差し出した夫は、愚かだけれど、
花壇の花達にとっては確かに神であったと思います。
そして、夫を尊敬し、夫のすることを正しいと思い従う妻も、バリでは最高位の女神になっています。
神とは、必ずしも剣を持って戦うものではないのです。

バリの神話を、きちんと紹介してみたくなったので、記事にしてみました。