ナナ公の独り言

都内在住既婚会社員女の日記です

2.オトコノサガ

やったぜ!
俺は一気に、階段を駆け下りた。

俺は去年、中1の時、保健委員やっていた。
保健当番は、給食後の昼休みと放課後、
それぞれ週1回まわってきて、保健室にいなきゃいけない。
俺は、部活がさぼれるから、当番の日はいやじゃなかった。

ときどき、貧血で保健室に休みにくる女の子がいた。
クラスは違うが、同じ1年で、朝礼のときにも何度かしゃがみこんだり、
列を抜けて先生たちのほうへよろよろ歩いていく姿を見ることもあった。
俺は、運動会で行進するとき、避難訓練で整列するとき、
いつもその子を心配してた。

残念ながら、今年、2年になるときのクラス替えでも、
その子とは同じクラスになれなかった。
俺はまた、保健委員に立候補した。
彼女は、ときどきやってくる。

その彼女が、今週末の、俺の試合を見にくることになった。
1年とき一緒に保健委員やってた中嶋が、彼女を誘ってくれたんだ。
中嶋と彼女は、今同じクラスだ。
中嶋って、いい奴だな!
やつはオンナだが、ヘタな男の友達よりずっと話が分かるし、おもしろい。
サンキュー、中嶋っ!やったぜ!
・・・っと、階段を五段抜かしで着地して、
ごきっ。
つっ!足をひねった。

最悪だ。
俺の右足首は捻挫した。
週末の試合もなしだ。
着地した直後は、我慢できていた痛みが
放課後には、耐えられなくなって、部長の指示で俺は保健室に行った。

くそー、今日の当番誰だよ、さぼりやがって・・・。
保健室には誰もいなかった。
週末のスタメンからはずされ、惨めな気持ちで、一人で包帯巻こうとしていたら、中嶋が入ってきた。

お、どうしたんだよ。
・・・あんたこそ。今日当番なの?
・・・ちげーよ。

中嶋は、床に放り出された上履きと靴下、それから俺のはだしの足に気がついた。

俺は中嶋に手当てされながら、
週末の試合に出れなくなったことを話した。
ばかだね。
うっせーよ。
俺は、俺の前でうつむいて包帯を巻いている中嶋の、うなじを見てた。
細いなあ。ひとひねりだよなあ。
セーラーカラーから背中までがのぞけて、ブラジャーのホックが見えた。

終わったよ。

中嶋が顔をあげた。
いつのまにか、のりだしていた俺の顔に
中嶋の上気した顔がぶつかりそうになった。

・・・っ!

中嶋はとびのいた。
とびのくついでに、俺をはじきとばした。
…じゃ、じゃあ病院行きなさいよ!そう言って、ばたばた飛び出して行った。

最悪だ。
マジ最悪だ。
俺はどうやら、中嶋のことも好きらしい。
どっちかに決めないとまずいだろうな。
でも・・・ホントにどっちも同じくらい好きなんだ。
彼女は、とびきりかわいいし、
中嶋も・・・ちくしょー・・・かわいい。
片想いのくせに、俺、なんで悩んでるんだ。
でも、やっぱ今決めないとまずいよな。
いや、様子見て、うまくいったほうと・・・ばか!
最低だ。
マジ最低だよ。