ナナ公の独り言

都内在住既婚会社員女の日記です

#小説

美人妻ナナ公の事件簿8

私の名は、けいよい。 …えへへ、お久しぶりです。あれから3年ぶり、私も大学四年生になりました。 実は来年の春、卒業と同時に結婚が決まりました。ぬーとです。 私は残念ながら、ぬー一筋の学生生活を送り、五人も恋人候補がいたわけでもないし、 まして、…

美人妻ナナ公の事件簿6

毎日、あっついですねえ、皆さん! 志武矢市もどうもこうもないほどにあっついです! と、いうわけで、私は今、この真夏に汗一つかかず爽やかに微笑むいい匂いのする美女・ナナ公さんちにいます。 お久しぶりです、けいよいでーす。 あっついので単刀直入に…

美人妻ナナ公の事件簿3

「今の子、誰だい?」 志武矢市で評判の美人妻ナナ公の夫、ちょっとうっかり者のメガネ氏は、 居間に入りながら、ナナ公に聞いた。 「あれは、けいよいちゃんよ」 「けいよいちゃん?」 メガネは、たった今帰宅したところだ。 何回かチャイム鳴らしたものの…

クリスマスの天使

カタッ。 真夜中、チエリが、物音で目を覚ますと、そこには天使が立っていました。 クリスマスの天使だ。 チエリはすぐわかりました。 チエリの住む国では、クリスマスに訪れるものが2種類あります。 ひとつはサンタクロース。 もうひとつは、クリスマスの…

ライン 6―② 最終話

終わりのない二十五メートルをクロールで進む中、ぼくは昨日のことを思い出していた。 昨日ぼくは、陽介の病院に行ってきた。陽介の病室は個室だったので、ぼくはノックして返事を待たずに入った。 突然現れたぼくに、陽介は目を丸くした。 「よう元気か」 …

ライン 6―①

6 二十五メートル 放課後のプールは開放されていて、生徒達でおおにぎわいだ。 一番左のレーンは泳げない人専用で、プールの他の部分と区切られている。そこでは、ぼくみたいな泳ぐのが苦手なやつが何人か練習している。 残念なことに、全員ぼくより年下だ…

ライン 5―②

「オレ、心臓移植したんだ。ずっとガキの頃から、心臓弱くて、つーか全然だめで、二十歳まで生きられないって医者に言われてたんだ。助かるには移植しかないってさ。学校も行ったり行かなかったりでさ、行っても何にもできなくてさ」 「今みたいに体育だけじ…

ガーデン

火の精と、水の精が、恋に落ちました。 精霊達の庭では、その噂でもちきりになりました。 樹の精は、信じませんでした。 火の精の親友の空気の精は、浮かれて小さな風のダンスを踊りました。 花の精は、優しい水の精に憧れていたので、がっかりしました。 年…

ライン 4―④

月曜日、由貴がぼくのクラスにきた。ドアのところから不安そうに教室をのぞく。 「小山くん、いますか?」 ぼくは、廊下に出た。ぼくと由貴なんて、一時は噂の中心の二人だったのに、今じゃこのツーショットを見ても、だれもそのことに気がつかない。 由貴が…

ライン 4―③

低くて優しい声だった。男の人は、近くで見るとけっこうしわがあって、僕のお父さんと同じくらいの歳に見えた。手や指にいっぱい傷がある。 陽介も拾い集めたものを、おばあさんがひろげた袋に入れている。ぼくもいくつか拾って、そこに入れた。おばあさんは…

ライン 4―②

金曜日の帰り、ぼくたちは市の中心地に向かった。陽介が、由貴からお父さんの職場をそれとなく聞きだしてくれたのだ。 改札を出て、住所をたよりに目的地をさがす。陽介が持ってきた自動車用の地図は、ぼくたちにはちょっとむずかしい。 今年はいつもの夏よ…

ライン 4―①

4 お母さんを殺した人 陽介は、そのあと一週間休んで、次の週元気に登校してきた。 ぼくは、あの日、校門であったことを見ていたやつの告げ口で、すっかり悪者にされていたが、陽介がやってくるとそれもおさまった。 陽介は、前と変わらずぼくと一番に仲良…

ライン 3-③

それからぼくは、黒星が多くなった。居残りになると、局に集中できないのだ。早く終わらせたくて、へぼばかりしてしまう。 勝ち負けはどうでもいいから、とにかく早く終わらせたかった。何回か先生に注意された。負けるのはしょうがないが、まじめにやらない…

ライン 3-②

時間割りでは、週に一度、木曜日の四時間目にクラブ活動がある。ぼくは将棋クラブに入っている。ほんとはバスケ部に入りたかったんだがしょうがない。 希望人数が多くて、じゃんけんで負けたんだ。第二希望の軟式テニスも、第三希望の工作クラブも、定員いっ…

ライン 3-①

3 転校生 河野陽介は、もう十三才だ。十三才はだんぜんかっこいい。クラスのみんなも一目おいている。だってクラスのみんなより、ふたつ上だったから。 陽介は、小学五年生の四月にぼくたちのクラスに転校してきた。お母さんが死んだあの夏から、もう二年が…

ライン 2-②

ばしゃん、とはでな音をたててパイプいすが女の人の背中にぶつかった。 女の人はよろけて床にひざをついた。女の子が悲鳴をあげて泣き出した。 お父さんや、受付の人が、倒れた女の人にかけよる。 「悟!」 お父さんは、女の人を助けおこしながら、きびしい…

ライン 2-①

2 由貴 お母さんのお葬式は、その日から二日後になった。お葬式をするにも、いい日悪い日があるってことを、ぼくは知った。お母さんのお葬式は、いい日ではなかったけど悪い日でもないってことだった。 夏だから、早めにしたほうがいいんだって。 今日は、…

ライン 1-②

殺す、という単語にぼくはどきっとして、二人の顔を見た。 教頭先生はとっくに帰っていて、部屋にはぼくと悟とお父さんの三人きりだった。いや、お母さんがいるから四人。小山家の家族だけだった。 悟は中学一年生だ。四つ上の兄貴だ。お父さんは、新聞社に…

ライン 1-①

1 お母さんが死んだこと ぼくのお母さんが死んだのは、ぼくが小学三年生の夏休みの直前で、たぶんぼくはそのとき、水の中にいたんじゃないかと思う。 教頭先生が、突然ぼくの教室に入ってきて、ぼくの名前を呼んだとき、ぼくのクラスは三時間目の学級会の最…

ゼロ時間へ④

4回目、最終回です。 ええと、覚えてる方いますか? と、ここで、この「ゼロ時間へ」の解説ばーっとやってもいいんですが、 それも今までの焼き直しなだけなので、 許して! 忘れちゃってた方は、もいちど①から読み直して! ほんとはこの4回目は一ヶ月くらい…

目と耳

その青年はさびしがりやの嘘つきでした。 二人の少女と出会ったとき、青年は二人の心を手に入れたいと思いました。 少女の一人には耳がなく、 もう一人の少女には目がありませんでした。 耳のない少女には、青年の声が聞こえません。 彼の、さびしそうな瞳と…

ゼロ時間へ③

ゼロ時間へ、第3回、テーマは「真実の愛」です。 あ、ここでいう真実の愛とは、その深さで恋敵に勝つほどの愛、という意味です。 前回取り上げた「無実はさいなむ」でも 真実の愛について、クリスティの考え方は、少し分かります。 「無実はさいなむ」は、 …

ノック

ある晩、少女の部屋の窓を叩く音がしました。 「こんばんは」 少女は少し驚きましたが、 窓を叩く妖精の話は聞いたことがあったので、冷静に答えました。 「こんばんは。あなたはだあれ?」 すると、窓の外の声が言いました。 「僕はシュウ。お話しようよ」 …

ゼロ時間へ②

ゼロ時間へ、第2回、テーマは「二人の女」です。 あ、その前に。ひとつヒントを。 「ゼロ時間へ」は、完全なホワイダニットです。 聡明な読者のかたが、もし動機解明できたなら、同時に、犯人指定できるでしょう。 では今回のテーマ、「二人の女」について、…

3.勘違いの恋人

噂だよ。 できてる、って。 つきあってる、って。 ほんと? 私は悔しいけどいつもどこか具合が悪い。 学校とか休み多いし、 体育も見学が多いから、友達は少ない。 保健室の常連だ。 彼のことは、ずっと好きだった。 はじめて、見たときから。違う、いつのま…

2.オトコノサガ

やったぜ! 俺は一気に、階段を駆け下りた。 俺は去年、中1の時、保健委員やっていた。 保健当番は、給食後の昼休みと放課後、 それぞれ週1回まわってきて、保健室にいなきゃいけない。 俺は、部活がさぼれるから、当番の日はいやじゃなかった。 ときどき、…

1.変化なし

ぱきん。 胸の奥でなにかが割れる音がした。 鏡をのぞいてみる。 なにも変わらない。 いつもどおり。 確かに胸が痛かったのに、どこにも傷ひとつない。。 休み時間のたびに、わたしの席に来るあいつ。 去年、ぴかぴかの中学1年生のとき、同じクラスで、一緒…

旅人と五人の姫君

ある深い深い森の一番奥に、古いお城がありました。お城には年とった醜い魔女が住んでいました。 ある日お城に一人の旅人が迷い込んできました。 魔女は、疲れ果てた旅人にたっぷりの食事を与えもてなしました。 「ありがとうございます。大変たすかりました…

ゼロ時間へ①

クリスティを語る、第二回のお題は「ゼロ時間へ」です。 前回「無実はさいなむ」の長い読みづらい文に懲りて、 今回は何回かに分けて、語らせていただこうと思います。 出だしは、、ロンドンのあるサロンでの、男たちの会話です。 男たちは皆、法曹関係者で…

疑わしきは罰せず

こんにちは、語るのが下手なナナ公です。 もう4回目なのに、ちゃんとアガサの小説をとりあげたのはたった1回。 今回もブレイクタイムです。 今回はアガサの傾向・お得意ストーリーについて、でしたね。 「過去の殺人がよみがえる」 「マザーグース」 「疑わ…