#小説
私の名は、けいよい。 …えへへ、お久しぶりです。あれから3年ぶり、私も大学四年生になりました。 実は来年の春、卒業と同時に結婚が決まりました。ぬーとです。 私は残念ながら、ぬー一筋の学生生活を送り、五人も恋人候補がいたわけでもないし、 まして、…
毎日、あっついですねえ、皆さん! 志武矢市もどうもこうもないほどにあっついです! と、いうわけで、私は今、この真夏に汗一つかかず爽やかに微笑むいい匂いのする美女・ナナ公さんちにいます。 お久しぶりです、けいよいでーす。 あっついので単刀直入に…
「今の子、誰だい?」 志武矢市で評判の美人妻ナナ公の夫、ちょっとうっかり者のメガネ氏は、 居間に入りながら、ナナ公に聞いた。 「あれは、けいよいちゃんよ」 「けいよいちゃん?」 メガネは、たった今帰宅したところだ。 何回かチャイム鳴らしたものの…
カタッ。 真夜中、チエリが、物音で目を覚ますと、そこには天使が立っていました。 クリスマスの天使だ。 チエリはすぐわかりました。 チエリの住む国では、クリスマスに訪れるものが2種類あります。 ひとつはサンタクロース。 もうひとつは、クリスマスの…
終わりのない二十五メートルをクロールで進む中、ぼくは昨日のことを思い出していた。 昨日ぼくは、陽介の病院に行ってきた。陽介の病室は個室だったので、ぼくはノックして返事を待たずに入った。 突然現れたぼくに、陽介は目を丸くした。 「よう元気か」 …
6 二十五メートル 放課後のプールは開放されていて、生徒達でおおにぎわいだ。 一番左のレーンは泳げない人専用で、プールの他の部分と区切られている。そこでは、ぼくみたいな泳ぐのが苦手なやつが何人か練習している。 残念なことに、全員ぼくより年下だ…
「オレ、心臓移植したんだ。ずっとガキの頃から、心臓弱くて、つーか全然だめで、二十歳まで生きられないって医者に言われてたんだ。助かるには移植しかないってさ。学校も行ったり行かなかったりでさ、行っても何にもできなくてさ」 「今みたいに体育だけじ…
火の精と、水の精が、恋に落ちました。 精霊達の庭では、その噂でもちきりになりました。 樹の精は、信じませんでした。 火の精の親友の空気の精は、浮かれて小さな風のダンスを踊りました。 花の精は、優しい水の精に憧れていたので、がっかりしました。 年…
月曜日、由貴がぼくのクラスにきた。ドアのところから不安そうに教室をのぞく。 「小山くん、いますか?」 ぼくは、廊下に出た。ぼくと由貴なんて、一時は噂の中心の二人だったのに、今じゃこのツーショットを見ても、だれもそのことに気がつかない。 由貴が…
低くて優しい声だった。男の人は、近くで見るとけっこうしわがあって、僕のお父さんと同じくらいの歳に見えた。手や指にいっぱい傷がある。 陽介も拾い集めたものを、おばあさんがひろげた袋に入れている。ぼくもいくつか拾って、そこに入れた。おばあさんは…
金曜日の帰り、ぼくたちは市の中心地に向かった。陽介が、由貴からお父さんの職場をそれとなく聞きだしてくれたのだ。 改札を出て、住所をたよりに目的地をさがす。陽介が持ってきた自動車用の地図は、ぼくたちにはちょっとむずかしい。 今年はいつもの夏よ…
4 お母さんを殺した人 陽介は、そのあと一週間休んで、次の週元気に登校してきた。 ぼくは、あの日、校門であったことを見ていたやつの告げ口で、すっかり悪者にされていたが、陽介がやってくるとそれもおさまった。 陽介は、前と変わらずぼくと一番に仲良…
それからぼくは、黒星が多くなった。居残りになると、局に集中できないのだ。早く終わらせたくて、へぼばかりしてしまう。 勝ち負けはどうでもいいから、とにかく早く終わらせたかった。何回か先生に注意された。負けるのはしょうがないが、まじめにやらない…
時間割りでは、週に一度、木曜日の四時間目にクラブ活動がある。ぼくは将棋クラブに入っている。ほんとはバスケ部に入りたかったんだがしょうがない。 希望人数が多くて、じゃんけんで負けたんだ。第二希望の軟式テニスも、第三希望の工作クラブも、定員いっ…
3 転校生 河野陽介は、もう十三才だ。十三才はだんぜんかっこいい。クラスのみんなも一目おいている。だってクラスのみんなより、ふたつ上だったから。 陽介は、小学五年生の四月にぼくたちのクラスに転校してきた。お母さんが死んだあの夏から、もう二年が…
ばしゃん、とはでな音をたててパイプいすが女の人の背中にぶつかった。 女の人はよろけて床にひざをついた。女の子が悲鳴をあげて泣き出した。 お父さんや、受付の人が、倒れた女の人にかけよる。 「悟!」 お父さんは、女の人を助けおこしながら、きびしい…
2 由貴 お母さんのお葬式は、その日から二日後になった。お葬式をするにも、いい日悪い日があるってことを、ぼくは知った。お母さんのお葬式は、いい日ではなかったけど悪い日でもないってことだった。 夏だから、早めにしたほうがいいんだって。 今日は、…
殺す、という単語にぼくはどきっとして、二人の顔を見た。 教頭先生はとっくに帰っていて、部屋にはぼくと悟とお父さんの三人きりだった。いや、お母さんがいるから四人。小山家の家族だけだった。 悟は中学一年生だ。四つ上の兄貴だ。お父さんは、新聞社に…
1 お母さんが死んだこと ぼくのお母さんが死んだのは、ぼくが小学三年生の夏休みの直前で、たぶんぼくはそのとき、水の中にいたんじゃないかと思う。 教頭先生が、突然ぼくの教室に入ってきて、ぼくの名前を呼んだとき、ぼくのクラスは三時間目の学級会の最…
4回目、最終回です。 ええと、覚えてる方いますか? と、ここで、この「ゼロ時間へ」の解説ばーっとやってもいいんですが、 それも今までの焼き直しなだけなので、 許して! 忘れちゃってた方は、もいちど①から読み直して! ほんとはこの4回目は一ヶ月くらい…
その青年はさびしがりやの嘘つきでした。 二人の少女と出会ったとき、青年は二人の心を手に入れたいと思いました。 少女の一人には耳がなく、 もう一人の少女には目がありませんでした。 耳のない少女には、青年の声が聞こえません。 彼の、さびしそうな瞳と…
ゼロ時間へ、第3回、テーマは「真実の愛」です。 あ、ここでいう真実の愛とは、その深さで恋敵に勝つほどの愛、という意味です。 前回取り上げた「無実はさいなむ」でも 真実の愛について、クリスティの考え方は、少し分かります。 「無実はさいなむ」は、 …
ある晩、少女の部屋の窓を叩く音がしました。 「こんばんは」 少女は少し驚きましたが、 窓を叩く妖精の話は聞いたことがあったので、冷静に答えました。 「こんばんは。あなたはだあれ?」 すると、窓の外の声が言いました。 「僕はシュウ。お話しようよ」 …
ゼロ時間へ、第2回、テーマは「二人の女」です。 あ、その前に。ひとつヒントを。 「ゼロ時間へ」は、完全なホワイダニットです。 聡明な読者のかたが、もし動機解明できたなら、同時に、犯人指定できるでしょう。 では今回のテーマ、「二人の女」について、…
噂だよ。 できてる、って。 つきあってる、って。 ほんと? 私は悔しいけどいつもどこか具合が悪い。 学校とか休み多いし、 体育も見学が多いから、友達は少ない。 保健室の常連だ。 彼のことは、ずっと好きだった。 はじめて、見たときから。違う、いつのま…
やったぜ! 俺は一気に、階段を駆け下りた。 俺は去年、中1の時、保健委員やっていた。 保健当番は、給食後の昼休みと放課後、 それぞれ週1回まわってきて、保健室にいなきゃいけない。 俺は、部活がさぼれるから、当番の日はいやじゃなかった。 ときどき、…
ぱきん。 胸の奥でなにかが割れる音がした。 鏡をのぞいてみる。 なにも変わらない。 いつもどおり。 確かに胸が痛かったのに、どこにも傷ひとつない。。 休み時間のたびに、わたしの席に来るあいつ。 去年、ぴかぴかの中学1年生のとき、同じクラスで、一緒…
ある深い深い森の一番奥に、古いお城がありました。お城には年とった醜い魔女が住んでいました。 ある日お城に一人の旅人が迷い込んできました。 魔女は、疲れ果てた旅人にたっぷりの食事を与えもてなしました。 「ありがとうございます。大変たすかりました…
クリスティを語る、第二回のお題は「ゼロ時間へ」です。 前回「無実はさいなむ」の長い読みづらい文に懲りて、 今回は何回かに分けて、語らせていただこうと思います。 出だしは、、ロンドンのあるサロンでの、男たちの会話です。 男たちは皆、法曹関係者で…
こんにちは、語るのが下手なナナ公です。 もう4回目なのに、ちゃんとアガサの小説をとりあげたのはたった1回。 今回もブレイクタイムです。 今回はアガサの傾向・お得意ストーリーについて、でしたね。 「過去の殺人がよみがえる」 「マザーグース」 「疑わ…