ナナ公の独り言

都内在住既婚会社員女の日記です

3.勘違いの恋人

噂だよ。
できてる、って。
つきあってる、って。
ほんと?

私は悔しいけどいつもどこか具合が悪い。
学校とか休み多いし、
体育も見学が多いから、友達は少ない。
保健室の常連だ。

彼のことは、ずっと好きだった。
はじめて、見たときから。違う、いつのまにか。
何度も保健室で会った。
彼は保健委員で、ときどき当番だったから。
彼の顔を見るだけで、頭痛や吐き気が2割は回復する。
同じ1年の隣のクラスの男子。
優しかったし、笑顔が可愛いし、他の男子にないものがあって、
…やめよう。私は彼に恋しちゃったんだ。
だから、特別に見えてる。
それだけ。
でも、たぶん…彼も私のこと好きだと思う。

養護の先生は卓球部の顧問で、いないことも多いから、二人きりの保健室。
私は、ベッドの上から彼を見てる。
彼は、私の寝たふりにだまされてる。
私のこと、ずっと見てるの、知ってるよ。
保健室のベッドにいるときだけじゃない。
廊下でも体育館でも校庭でも、私のこと見てるよね。
あんなに目があえば、好きになっちゃうよ。
彼が私を見てるときは、もう背中でもわかる。

ずるいなあ。
待ってたのに。
両想いだと思って、待ってたのに。
勘違いだった。

知らなかった。
彼女がいるなんて。
2年になってクラス替えして、私の前の席になった女の子。
目がくりくりして、男の子みたいにショートカットで、健康そうで、
こんなふうに生まれたかったって思う、女の子。
彼女も去年は、保健委員だった。
お世話になりました。
あなたにも、……あなたの彼氏にも。

今、その二人が私の目の前にいる。
休み時間のたびに、彼はひとつ上のこの階に来て、前の席の彼女と話す。
彼は大声だから、ぜんぶ聞こえちゃうよ。
彼が彼女を呼び捨てにするたびに、
ずきん。
心臓がはねる。
聞きたくないのに、聞いちゃう。本を読んでるふりして聞いちゃう。
ずきん。ずきん。
彼の笑顔に心臓がはねる。

彼は、彼女に言っている。
今度の日曜日は、部活のバレーボールの試合だって。
2年生になってやっと試合に出られるようになったんだぜ、って。
誰も応援に来てくれないんだけど…、って。
いいなあ、見え見えのお誘い。

突然彼女が、私を振り返った。
こいつの今週日曜のバレー部の試合に応援に行こうよ。
なんで!?
か、顔にでていましたか?
行きたいよお、って。

つきあってないのかな?
私の気持ちを微妙に察して協力してくれてるとか?
そんなことないか。

つい試しちゃう。
彼、優しいよね。保健室でも優しくしてもらってるの。
なーんて言ったりして。
私ってヤな女。
でもほら。
放課後、彼女保健室に走っていった。
たぶん彼の当番の日が知りたくて、当番表見に行ったんだと思う。

私は、走れないから、彼にはついていけないよ。
待ってることしかできないよ。

お似合いのあんな子がいたなんて、
全然知らなかったよ。