美人妻ナナ公の事件簿５ - ナナ公の独り言

鏡よ鏡よ鏡さん。世界で一番美しいのはだあれ？

ハイ。それは、ナナ公さんです。

…なあんて、ひとりぼけつっこみ･･･じゃなかった、本気でマジで心の底から思っていることを、
鏡に向かってつぶやいてる場合ではないのだ。

「どうしたの？けいよいちゃん」

私は、けいよい。今、志武矢市が世界に誇るハイパーゴージャスアンビリーバブル美人の奥様、
ナナ公さん家にお邪魔しているところだ。

そして本日８３９回目の溜息をついたところである。
手鏡に向かって。

「なんでこんなに平凡な顔なのかあ･･･と思って･･･。もう少し美人だったらなあ、って。
　･･･ナ、ナナ公さん程でないにしても！」

･･･あー、危なかった･･･。

「･･･ふうん。フフッ、大丈夫、けいよいちゃんはとても可愛いわよ。なにかあったの？」

･･･さすが天才ナナ公様。そのとおりです。実は、なにかあったのです。

私は、昨夜の出来事を、この頼れるスーパーレディ・ナナ公さんに相談することにした。

「昨日の夜、ピョンと名乗る男性が私のアパートのドアを叩いたんです。
　私は、その人を知っていたので、玄関に用意していたゴミ袋をよけて、ドアを開けました」

「ゴミ袋？」

「あ、うちのアパートの生ゴミの日、今朝なんですよ。で、昨夜のうちにまとめておいたのが、
　ドア開けるとき邪魔だから･･･」

「あらまあ。同じ志武矢市内でもゴミの日って違うのね。うちは明日だわ」

「うっかり僕のこと捨てないでおくれよ？」

と、ゲームに夢中になっていたメガネさんが、突然話に割り込んできた。
ちなみにメガネさんというのは、ナナ公さんの息子さん、ではなくて旦那様だ。よく事件に巻き込まれる。

もちろん頭脳明晰なナナ公さんが、いつもあっというまに解決するのだが。

初対面の時はちょっと恥ずかしかったな。
私は、やっぱりナナ公さん家でくつろいでいたのだが、
突然大嫌いな虫が出たので、びっくりして家から飛び出してしまったのだ。
しかも外は突然の豪雨で、体当たりするようにアパートのドアを押し開けた時にはびしょぬれになっていた。

っていうか、部屋に入るなり雨止んだんだけど･･･！夕焼けにきれいな虹がかかって･･･
ゲ。虹って漢字にも虫が付いてるよ。虫じゃないのに！

「それで、まあ、そのピョンっていう男なんですが」

とりあえずメガネさんは無視して、話を続ける。この話が終わったらゲームの相手してあげますから。

「私の部屋の隣に住んでるＯＬさんがいて、ええとラスカルさんって言うんですが、
　彼女の恋人さんなんです。よく一緒にいるところ見かけます」

「その人がなんで、けいよいちゃんの部屋に？」

「ハイ。それが･･･」

私はちょっと口ごもった。実は私にも最近彼氏ができた。ぬーという名の大学の同級生だ。

えへへ。

「あの、ぬーが･･･」

「ああ、ぬークン？いつ紹介してくれるの？」

「それが、紹介する前に別れることになってしまうかも。
　実は、そのピョンさんが言うには、ラスカルさんとぬーが浮気してるって言うんです」

ピョンさんの話はこうだ。

ラスカルの部屋で昼寝から目が覚めたら、ラスカルの姿がなかった。玄関のほうで人の気配がする。
ドアの閉まった音が聞こえたので、誰かが来ていたのだと思った。

しかし、ラスカルがなかなか戻ってこない。

そこで起き上がって見に行くと、ラスカルがなんだかあわてた様子で、玄関にいた。

「これが、その玄関の写真なの？」

私は、ピョンさんに渡された一枚の写真を、ナナ公さんに見せた。

「はい。ピョンさんは、ここ最近、ラスカルさんの様子が変なので、浮気を疑っていたようなんです。
　それで、そのときもすぐ、浮気相手が来たんだ！とひらめいたんだそうです。
　でも、自分がいるので、ラスカルさんは追い返したんだ･･･と。
　ドアについているのぞき穴からのぞいたら、ちょうどぬーが、通り過ぎるとこだったそうです」

「ふうん」

「それで･･･そのドアにひっかかって落ちている眼鏡なんですが、その眼鏡、
　ラスカルさんのものでもピョンさんのものでもないそうなんです。
　だから、ぬーにかけさせろって。度があったらぬーがその浮気相手に違いないって。
　
　ぬーって目が悪いんですよ。でもまだ私はコンタクトのときしか会ったこと無くて。
　眼鏡姿みてみたいって言ったら、なくしたから、って･･･」

「あっ、これ、僕の眼鏡だ」

またまたメガネさんが割り込んできた。もうっ。大人の話してるのに！･･･って！？

「やあ、こないだねえ、ふらっと散歩してたら道に迷っちゃってねえ、眼鏡もどこかに落としてきちゃったんだよ」

えええええっ。どうして！どうして道歩いてるだけで眼鏡落とすの？
っていうか眼鏡なしで帰ってこれたの？えええええっ！

いやいや。そんな訳ないよね。いくらメガネさんがすこーーーーーしウッカリさんでも、
眼鏡落として気がつかずに帰ってきたりしないよね？

じゃあ･･･じゃあ･･･ラスカルさんの浮気相手って･･･まさか･･･

「フフッ」

と、写真を見ていたナナ公さんが、小さい笑い声をもらした。
天国にもし門があって、その門に可愛らしい金色の鈴が付いていたら、
さもこうであろう、と思うような、聞いた人間を陶然とさせる笑い声だ。

「そうねえ。もうすぐ６月だし。ジューンブライドは幸せになるっていうし、
　ピョンさんはラスカルさんにプロポーズしたほうがいいわね。
　きっと彼女は待ってると思うな。･･･いや、その逆もあるかな？別れたがってるのかもね。
　なんにしても、お茶目だわね♥」

誰が！なんで！

お茶目って誰のことですか～！

「とにかく、もう鏡見るのはやめなさいネ。８４０回目の溜息ついたら怒るわよ。ウフフフッ。
　ホント、けいよいちゃんはすっごーーーーーく可愛いわよ。わ・り・と」

問題：さて、お茶目なのは誰でしょうか。お茶目な真相を当ててください。

やあ、久々のナナ公事件簿ですよ。

最近は、すっかり皆さんのブログにご無沙汰してるので、
果たして解答コメントがいくつ入れていただけるか不安です。

しかし、ビスタとはいえ、ＰＣも好調ですし、これから暑くなると家にこもりがちになるので、
ブログライフどっぷりな夏が今年もやってくると思います。
どうか皆さん、ここで見捨てずナナ公と仲良くしてくださいネ。ﾃﾍｯ　ｻｱ　ｺﾀｴﾛ