ナナ公の独り言

都内在住既婚会社員女の日記です

ゼロ時間へ②

ゼロ時間へ、第2回、テーマは「二人の女」です。

あ、その前に。ひとつヒントを。
「ゼロ時間へ」は、完全なホワイダニットです。
聡明な読者のかたが、もし動機解明できたなら、同時に、犯人指定できるでしょう。

では今回のテーマ、「二人の女」について、語ります。
これもクリスティが、よく使うモチーフのひとつです。
長編では「五匹の子豚」「ホロー荘の殺人」他、中篇ではその名もずばり「砂にかかれた三角形」などがあり、
短編もあわせると50回くらい使っているシチュエーションです。、
一人の男をめぐる、二人の女。
一人はおとなしく清楚で可憐な女性。
一人は情熱的で華やかな目の覚めるような美人です。
まあ、前者が正妻で、後者が愛人のことが多いですね。

ネタバレしていいですか?

いいですか、アガサが「二人の女」のモチーフを出してきたら、
9割まで、男が本当に愛しているのは、派手で美しいほうではなく、
一見地味なおとなしいほうの女です。
これは、アガサが、自分自身が地味な女だから、その味方をしたと言うよりは、
まったくその反対で、
一見地味なくせに、したたかなやつめ!という可憐さや控えめさで
男の心をつかむ女を、こころよく思っていないのだとナナ公は解釈しています。
アガサは、外見の美しさや派手さがわざわいして、
本当の幸せをつかめないで苦しんでいる女性の内面を描くのが天下一品。
もしかすると、アガサ自身が、有名作家という肩書きしかみてくれない人々に、
さびしさと悔しさを抱いていたからかもしれません。

ちなみに、この逆パターンの三角関係である、
男二人に女一人というのも、わりと多いですが、
その場合、実は男のうち一人は、実はその女ではない別の女を好きだった、とか、
その男のことを本当に理解してくれている、幼馴染の女がいた、など、
ふられたほうの男にも、別の恋人の用意がされていることが多いですね。

「ゼロ時間へ」では、
スポーツマンの男(多分現代で言うと、松岡修三のような存在です)と、再婚したての年若い妻。
男の前妻、そしてこの前妻が離婚したときいてかけつけた、前妻に長い片想いをしている外国帰りの男、
さらに、男の今の妻である若い女の、色男(いわゆるホストですね)の男友達、
そして、皆をもてなす屋敷の女主人の話し相手のきまじめな30代の女性、
また、近くのホテルに宿泊している自殺未遂した青年も、忘れてはなりません。
あちこちでまきおこる多角関係!

ネタバレします。
最終的に、カップルは二組できます。