ライン 4―①
4 お母さんを殺した人
陽介は、そのあと一週間休んで、次の週元気に登校してきた。
ぼくは、あの日、校門であったことを見ていたやつの告げ口で、すっかり悪者にされていたが、陽介がやってくるとそれもおさまった。
陽介は、前と変わらずぼくと一番に仲良くしてくれた。ぼくは何度も陽介に謝った。病院にも何度も行ったのだが、そこでは会わせてもらえなかった。そのことも陽介に言った。
あの病院に行ったのは、お母さんが死んだとき以来だった。
ぼくは、なんだかいきおいで、お母さんのこと、お父さんと悟のこと、由貴のこと、なんでも陽介に話してしまった。
誰にも話したことがなかったことばかりだ。
陽介は、小さくなったようだった。ぼくが話してるのを聞いている間も、とても苦しそうだった。やっぱりまだ、体調は戻っていないんだ。
「透は、中桐さんのお父さんに会ったことある?」
「ないよ!そんなの!なんで会わなきゃなんないんだよ!」
「その人のこと、怒ってるんだ」
「そりゃそうだろ?お母さんをはねたんだぞ」
「そうだよな」
陽介は、木曜日に図書館に行かなくなった。かわりに病院に通院しているらしい。ぼくのせいだ。図書館に行かないのも、病院に行くのも。
「毎月の検査が毎週になっただけだよ」陽介は言った。
「毎月、行ってたんだ」
「うん。月一回土曜日に行ってた」
「陽介ってさ、どこが悪いの?」
陽介の病気がなんなのかは、クラスでも不思議のひとつで、みんな知りたがったが、担任は教えてくれなかった。陽介もそれに関しては、ぼくにも教えてくれなかった。
「・・・・・・」
「教えてくれよ。心配なんだよ」
「・・・じゃーさー、ひとつお願いがあるんだけど」
「なに」
「中桐さんのお父さんに、会いに行かないか?そしたら、オレの病気、教えてやる」
ぼくはとまどった。なんでそんなに由貴のお父さんが出てくるんだ。
ぼくがだまると、陽介が言った。
「だってさ、気にならないか。その・・・自分のお母さんを殺した人、見たくないか?」
「見たくないよ!」
ショックだった。できることなら忘れたいのに。陽介も「人殺しを見てみたい」んだろうか。由貴をいじめていた少年達のセリフが浮かぶ。
「そうか。ごめん」
陽介はすぐ謝って、ぼくたちは少しだまりこんだ。夏休みが目の前の帰り道だった。街道の歩道橋はもうすぐだ。
「わかったよ」
ぼくは言った。
「遠くから見るだけな。絶対話したりしないからな。向こうに気づかれなきゃいーよ」
陽介は「うん」と静かに言った。
陽介は、そのあと一週間休んで、次の週元気に登校してきた。
ぼくは、あの日、校門であったことを見ていたやつの告げ口で、すっかり悪者にされていたが、陽介がやってくるとそれもおさまった。
陽介は、前と変わらずぼくと一番に仲良くしてくれた。ぼくは何度も陽介に謝った。病院にも何度も行ったのだが、そこでは会わせてもらえなかった。そのことも陽介に言った。
あの病院に行ったのは、お母さんが死んだとき以来だった。
ぼくは、なんだかいきおいで、お母さんのこと、お父さんと悟のこと、由貴のこと、なんでも陽介に話してしまった。
誰にも話したことがなかったことばかりだ。
陽介は、小さくなったようだった。ぼくが話してるのを聞いている間も、とても苦しそうだった。やっぱりまだ、体調は戻っていないんだ。
「透は、中桐さんのお父さんに会ったことある?」
「ないよ!そんなの!なんで会わなきゃなんないんだよ!」
「その人のこと、怒ってるんだ」
「そりゃそうだろ?お母さんをはねたんだぞ」
「そうだよな」
陽介は、木曜日に図書館に行かなくなった。かわりに病院に通院しているらしい。ぼくのせいだ。図書館に行かないのも、病院に行くのも。
「毎月の検査が毎週になっただけだよ」陽介は言った。
「毎月、行ってたんだ」
「うん。月一回土曜日に行ってた」
「陽介ってさ、どこが悪いの?」
陽介の病気がなんなのかは、クラスでも不思議のひとつで、みんな知りたがったが、担任は教えてくれなかった。陽介もそれに関しては、ぼくにも教えてくれなかった。
「・・・・・・」
「教えてくれよ。心配なんだよ」
「・・・じゃーさー、ひとつお願いがあるんだけど」
「なに」
「中桐さんのお父さんに、会いに行かないか?そしたら、オレの病気、教えてやる」
ぼくはとまどった。なんでそんなに由貴のお父さんが出てくるんだ。
ぼくがだまると、陽介が言った。
「だってさ、気にならないか。その・・・自分のお母さんを殺した人、見たくないか?」
「見たくないよ!」
ショックだった。できることなら忘れたいのに。陽介も「人殺しを見てみたい」んだろうか。由貴をいじめていた少年達のセリフが浮かぶ。
「そうか。ごめん」
陽介はすぐ謝って、ぼくたちは少しだまりこんだ。夏休みが目の前の帰り道だった。街道の歩道橋はもうすぐだ。
「わかったよ」
ぼくは言った。
「遠くから見るだけな。絶対話したりしないからな。向こうに気づかれなきゃいーよ」
陽介は「うん」と静かに言った。